スウェーデンのグスタフ国王が、
「私たちは失敗した」と発言し、
自国の新型コロナ対策を批判したというふうに各所が
大騒ぎしてスウェーデン叩きが再開されています。
私は、立憲君主制の国の国王がこんなに堂々と
特定の政策批判をすることがあるんだ、と驚いたのですが、
やっぱりよくよく調べると、政策批判ではありませんでした。
グスタフ国王本人の肉声映像を見て、
スウェーデン現地メディアの報道を見比べましたが、
そもそも国王へのインタビューは、
「コロナ対策についてどう思いますか」とか
「集団免疫策をとったことについては?」というような内容ではなく、
年末恒例のような形で、国王として今年一年を振り返っての
感想でした。
確かに「私たちは失敗したと思います」と述べていますが、
コロナ政策が失敗だったという批判ではなく、
これだけ多くの人が亡くなったという事実、パンデミックに
おける社会全体の痛みについて、
国王としての痛み入る気持ちで「失敗」と表現したものでした。
あとには次のような言葉がつづいていました。
*****
私たちは失敗したと思います。
亡くなったすべて の人、そして多くの家族、
そして事業を失う可能性のある多くの起業家の悲しみと悔しさ
を考えると、それはひどいことだと感じます。
私はパンデミックの影響を受けたすべての家族のことを知っています。
この困難な状況でスウェーデンの人々は苦しんでいます。
亡くなった親族に、いまだに別れを告げることができずにいる
すべての家族のことを私は考えていますし、
あたたかくお別れすることができないという出来事は、
重くてトラウマになる経験だと思っています。
・・・(後略)
*****
現地の政府批判・ロックダウン派のコメンテーターが、
これを「国王によるコロナ政策への批判だ」と解釈して取り上げ、
テグネル氏を責めるための材料にしているようです。
しかし、スウェーデン王室からは、すでに、
スウェーデンが失敗したという国王の発言は、
コロナ戦略に対する批判と見るべきではない、
国王はスウェーデン全体、社会全体を指してコメントしている。
国王がすることは、さまざまな形で影響を受けたすべての人々、
またパンデミックで亡くなった人々への同情を示すことなのだ、
という風にコメントが出されていました。
そうなるとやはり、もともとスウェーデンが抱えていた
介護施設の仕組みの問題、移民政策の結果、起きた問題など
もろもろのことを含んでの、総じての気持ちの表明ということ
なのではないでしょうか。
ところが、国王の発言は、スウェーデン国内の政争の具に
使われていて、
そして、ロックダウン・自粛の成果を肯定したい国々の
マスコミが、そこに乗って「スウェーデンやっぱり失敗だ!」
という解釈でのみ過熱報道しているというのが、
いまの現象ではないかと思います。
実際、スウェーデンは他国と同様、冬になって感染者が
急増したものの、死者数、ICU使用数は、春よりも少なく
推移しているのです。
それは次回のライジングで詳報します。